埼玉県は県民生活をより豊かなものとするために「彩の国スポーツプラン2010」という施策をかかげ、 「する」「みる」「きわめる」「まなぶ」「ささえる」という5つの側面から具体的な試みをしてきています。 その一環として児童生徒の体力が年々低下傾向にあることにも着目し、歯止めをかける努力をしています。 具体的には、埼玉県教育委員会体育課が学校教育の側面から小学校向けの「すくすくプログラム」、 中・高校向けの「チャレンジプログラム」を作成し、運動することを奨励しています。 しかし、現状は運動する子としない子による体力レベルの二極化がますます大きくなる傾向にあり、 学校以外の場所でいかにからだを動かす機会を増やすかは重要なポイントです。 この解決策は文部科学省が推奨している「居場所づくり」を具体化することが重要であるといえます。 つまり、小学校レベルのスポーツ少年団、中・高校の運動部活動に加えて、地域スポーツクラブ、 あるいは「自由な遊び」などの運動をする「居場所づくり」を積極的に奨励し、 より多くの子どもたちに身体活動をする機会を増やしていく必要があります。 本研究はサッカーを通して身体活動をしている子どもたちを対象に、 スポーツをすることの有効性を実証することと、併せて生活、運動、栄養、健康などの側面について発育期の問題点を探ることを目的とします。 この結果を踏まえ、発育期、特に低年齢における問題点の所在を明らかにし、サッカー(スポーツ・身体活動)をすることの意義を全国に発信していきます。
キッズ研究プロジェクトI : 暑熱環境班
近年、天然芝の状態に近い「ロングパイル人工芝」が急速に普及されています。 しかし、人工的な素材でできているため、暑熱環境下における「暑熱ストレス」が高くなることが報告されています。 このような暑熱環境下での試合状況や、練習のパフォーマンスに対する人工芝の影響に関してはこれまで報告されていません。 本研究では、特に表面温度を直接受けると考えられる身長の低い少年サッカーに対し、 サッカーの試合をシミュレートした運動プロトコールを行わせて生理学的指標、運動のパフォーマンス指標への影響を検討します。 本研究の成果は、暑熱環境下の人工芝利用における少年サッカーの指導に対する練習時間帯、練習時間、休憩時間、運動強度、飲水などに有効な資料となります。
キッズ研究プロジェクトII: 栄養班
食生活の乱れや生活習慣病の若年化など、食生活上の問題の深刻化に伴い、 次代を担う子どもたちへの食育の重要性が叫ばれています。サッカーをはじめ、幼少時代から身体を動かす適度な習慣は、 子どもの発育発達に極めて大きく寄与しますが、食生活上の問題を棚上げにしたままでは、その効果を期待することも難しくなります。 その為にはサッカー(運動)をすることと併せて、適切な食育がなされる必要があります。 本研究では食習慣の基礎つくりとなる幼児期(6歳以下)の子どもの適切な食習慣の基礎作りを目的とします。
キッズ研究プロジェクトIII: 文献調査班
サッカーに関する科学的研究の世界各国の取り組みは、 系統だった形でなされているかは分かりませんが、かなりの量の論文が発表されています。 しかしながら、本プロジェクトが対象としているキッズのサッカーに関する発表論文は必ずしも多くはありません。 幅を広げて発育期としてとらえれば手元にある欧文論文だけでも75編を数えるのが現状です。 このような研究成果は、各国、各研究者がどのような点に注目し、どのような結果を得ているかが国内で紹介されて、 初めて役立つものです。しかし、国内のサッカーに関心のある研究者は本務と各自の研究に追われ、 このような成果物を紹介する作業を行うまでには至っていないのが実情です。 特に、本プロジェクトが対象としているキッズサッカーに関しては研究そのものが未分化であり、 このような成果物から示唆を受けるところが大きいと考えられます。 そこで、国内外のキッズを中心とした発育期のサッカーに関する研究論文を手分けして訳出し、 国内のサッカーに関する研究者や指導者に、これらを紹介することを計画しています。